青果市場(読み)せいかいちば

精選版 日本国語大辞典 「青果市場」の意味・読み・例文・類語

せいか‐いちばセイクヮ‥【青果市場】

  1. 〘 名詞 〙あおものいち(青物市)
    1. [初出の実例]「神田秋葉原の青果市場の活溌なる産業的新設備のモダン建築」(出典:新版大東京案内(1929)〈今和次郎〉東京の顔)

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改訂新版 世界大百科事典 「青果市場」の意味・わかりやすい解説

青果市場 (せいかしじょう)

青果とは野菜と果実総称であるが,それらの供給者と需要者とが会合して取引をする特定の場をいう。かつては青物市と呼ばれた。現在では,中央卸売市場,地方卸売市場,その他の卸売市場の三つの形態がある。このうち前2者は卸売市場法(1971公布)の規制のもとにある。卸売市場は卸売人,仲卸人,売買参加者,その他市場関係者から構成され,生産者は無条件委託販売が原則であり,卸売人は生産者からの販売委託を拒否できない。供給者は生産者,そのグループで組織している出荷組合産地商人,農協など多数である。需要者である買手は仲卸人,売買参加者で,これも多数なので純粋競争的性格が著しい。売手と買手が公開の〈せり〉によって現物を評価し,相互に競争を行って価格,仕入量を決定する。青果市場は各産地から青果物を集荷して買手に分荷するという流通機能と,評価という価格形成機能を果たすが,これが卸売市場の二大機能である。

 青果市場の運営経費は市場手数料でまかなわれるが,その率は中央卸売市場については法の定めるところによって,野菜は売上額の8.5%,果実は7%である。中央卸売市場以外の市場はそれに準じているが,市場規模が零細なほど高率になる傾向がある。市場手数料は定率制なので,市場の収益を高めるためには総売上額を伸ばさなければならない。そのために,多量の荷を計画的に出荷する産地と多数の売買参加者を掌握しようとして過当なサービス競争が展開された。その過当競争を防ぐため,産地に対しては荷主交付金として,大型荷口で計画的集出荷を行っている農協連など出荷団体に売上額の5/1000~14/1000を,また売買参加者に対しては売渡代金の延滞納を防止し,荷主への迅速確実な支払を保証するため,売上額の3/1000~4/1000を,せりに参加した個々仲買人,小売商などに代わってせり落し品の代金支払を行う仲買人組合,小売組合に交付する制度がとられている。

 青果市場の取引形態は,前近代的といわれた相対(あいたい)取引から公開の〈せり〉による価格形成に移り,需要と供給とによって適正な均衡価格が成立する。価格差は品質格差であって,一物一価の法則が原則であるが,産地規模による荷口の大きさ,出荷の計画継続性,品質と銘柄,規格包装などが価格格差をもたらす要因である。産地は,純粋競争市場において格差収入を取得するために産地規模を拡大し,品質規格の統一,銘柄の確立を推進しながら計画継続出荷の体制を確立し,市場の信頼を高める方向へと産地づくりを進め,市場占有率を高めて他の競争産地を排除し,価格交渉力を強化する。大型産地の形成,上場単位の大口化は,産地間競争によってもたらされた産地行動の一つである。産地は自主検査をはじめ共同選果,共同荷造り,売上代金の共同計算など共同販売を強化し,大型選果場を設立して機械選果が取り入れられるまでになった。一方,産地の大型化に対して青果市場の整備統合が進められ,大型産地→大型市場→大量消費という流通の近代化が確立した。この大量流通に品質規格の統一が大きく貢献している。市場は現物取引で荷口が多いほど非能率となる。青果は腐敗性商品なので取引の迅速性が要請されるが,これを満たすのがせり方式であり,見本せりである。見本せりは大量流通に即したせり方式であるが,上場単位の大口化に売買参加者の仕入れが伴わないので,共同せり,機械せりといった新しい方向が取り入れられ,取引の能率化と公正な価格形成をめざす市場運営が図られている。しかし近年,大量生産,大型市場という流通体系が地方市場の集荷力を低下させ,大型市場からの転送によって品ぞろいを補完するようになり,大型市場の集散市場化が強まっている。大型市場から仲卸人が仕入れて地方市場へ供給するので,流通マージンが累積され,それだけ消費者価格を押し上げている。
青物市
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百科事典マイペディア 「青果市場」の意味・わかりやすい解説

青果市場【せいかしじょう】

青物市場(あおものいちば)ともいい,野菜・果物など青果物の卸売市場。生鮮食料品であるため,都市とその周辺に発達した。江戸では駒込に戦国時代の1570年代に起こり,次いで千住,神田などに開設,大阪の天満,京都の八百屋町など各地で商品作物の流通市場を形成した。大都市のそれは1923年の中央卸売市場法で中央卸売市場に統合された。1999年現在で56都市に87ヵ所の市場が設けられているが,産地直送の宅配便などの市場外流通も増えている。→神田青物市

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世界大百科事典(旧版)内の青果市場の言及

【青物市】より

…こうして江戸への野菜類の集荷が進められ,明治維新を迎えることになる。青果市場【伊藤 好一】。…

【野菜】より

…一方,野菜加工の一つとしての冷凍野菜は,その鮮度維持機能とともに定価販売,事前加工処理,取扱いが簡便などの理由から急速な伸びを示し,アメリカ,台湾,中国,ニュージーランドなどからの輸入が多い。
[流通]
 零細多数の生産農家から多種少量当用買いの多数の消費者に野菜を届ける流通経路は複雑であるが,そのなかで卸売市場が,集分荷,価格形成の機能をもち,流通の中心的な役割を担っている(〈青果市場〉の項参照)。卸売市場への出荷は,生産者個人,生産者の共販組織,産地業者などが行い,近年は農協共販が多くなっている。…

※「青果市場」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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